はじめに
年々、雪崩災害が増加してくる中、昭和61(1986)年、雪国の生活を安全・安心で快適なものに変えていくことを目指して、当研究会が発足しました。
以来、冬の交通確保のために、道路法面の雪崩対策や人命、家屋を雪崩から守るための急傾斜地の雪崩対策に努めてきました。発足当初のコンクリート製(約80㎏)から、現在では、特殊合成樹脂製雪崩防止杭(PB-Ⅰ型)に改良しました。「PSG」とはPrevention of the Snow Glideの略称で、当時の国立防災研究所新庄雪氷防災研究所所長中村勉博士から命名していただきました。
研究会の名前の由来はTN-Prevention of the Snow Glideとしての会発足当初から工法開発、試験施工、当研究会の発展にご尽力をいただいた、前理事長の故西村敏氏、及び前会長の山形大学名誉教授故塚原初男先生の頭文字を頂いております。今後とも、なお一層の研鑽を重ねいろいろな雪崩現象の現場に最適な新しい工法の研究・開発に努めてまいります。
雪崩防止工法の概要
主に人為的に造成された急勾配の斜面、又、自然の雪崩常習地を含む豪雪地、多雪地における積雪不安定斜面の全層雪崩発生を抑制する為の雪崩予防杭です。
斜面に降雪した雪は、重力の作用や凍結融解を繰り返しながら、雪の層全体が斜面に沿って下方(法尻)にずれるグライド現象が生じます。
積雪層内の重力によって層内にクラックが生じ、そこから下方に向かって流下していき、勢力の衰えたところで堆積し道路や生活域に押し出されます。
雪崩の発生を未然に防止するために斜面に垂直に建てられた杭の集合体によって日々降雪した雪の層に凹凸を発生させ、その褶曲(しゅうきょく)した層によって雪の滑り(グライド)を防ごうと考えられた工法です。群杭としての効果を発揮します。
近年、当研究会の雪崩予防杭施工済み箇所の斜面積雪面に、『雪えくぼ』(融雪水・雨水の浸透によって形成される雪面上の無数のくぼみ)が発生することにより積雪内部構造がより複雑化されており、また表層雪崩発生に対してもある程度効果があると考えられます。
適用勾配
1:0.5程度(63°) ~ 1:1.2程度(40°)とする。
施工箇所の法長
検討する配置ピッチにもよるが、2.50m以上を基本とする。
施工対象積雪地域
一般的には、降雪期にもしばしば降雨があり、積雪が湿雪化しやすい日本海側の積雪地方を対象とする。
n年最大積雪深
設置箇所の勾配や、n年最大積雪深における雪密度(雪の単位体積重量)、設置間隔(ピッチ)等の考慮も行うが、標準的には4.50m以下程度とする。
施工箇所の土質
TN-PSG工法は、鉄筋挿入工(ロックボルト)併用とする工法の為、定着部の周面摩擦抵抗値が十分期待できる土質とする。
配置間隔(ピッチ)
設置は、その特性上、雪崩発生区全域にわたって設置し、群杭として効果を期待するものであり、必ず千鳥配置とする。
配置間隔は、縦、横方向ともに、2.0~4.0m程度とし、同ピッチを基本とする。
FRP製ブロック状の雪崩防止杭を現場に運搬し、ロックボルトによって斜面に固定する方法である。1基あたりの杭重量はわずか8.0kg であり、重機クレーンが届かないような長大斜面上部等への人力運搬施工が容易で施工性が良い。
また積雪以外の外的荷重がかかった場合のメンテナンスも難しいこともあり、杭1基あたりの重量を著しく軽減させた工法である。
底面が平坦で製品自体では設置箇所の不陸が取れないため、基礎ベース(金網製型枠モルタル吹付基礎)が必要である。
基礎ベース
PB-Ⅰ型の底面寸法より10cmずつ大きく作られており、鉄筋挿入工を施すための保孔管の設置や吹付モルタルを施工するまでの金網製型枠の保持のためフープ筋が装着されている。
金網型枠で出来ており、吹付法枠工やモルタル吹付工との併用で施工する工法である。
法面保護を施す際、吹付法枠工が近年多く採用されてきた。しかし、吹付法枠工のみでは法面保護や法面抑止は行えても、雪崩予防の効果は無い。
吹付法枠工等との鉄筋連結、同時モルタル吹付により、一体構造とすることができる。
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日本雪氷学会 会員
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